社団法人 日本自閉症協会東京都支部

●障害者自立支援法

1、議論が尽くされぬまま、急ぎ制定された法

これまでは、身体障害・知的障害・精神障害のように障害種別ごとに、異なる法律に基づいて 行われていた福祉サービスや公費負担医療などが、平成18年4月から「障害者自立支援法という」共通の制度の中で、提供される仕組みになりました。

障害者福祉財源を確保するためにと、考え出されたこの法は、利用したサービスの量と所得に応じた負担を利用者に求める制度で、平成18年10月から、全面施行されました。 →応益負担、つまり受けた給付に応じた負担を利用者に求める制度で、原則としてかかった費用の1割が自己負担となります。

十分な検討がないまま作られたこの法は、平成18年10月から全面施行となっています。しかし、現在、「国が、その障害者の支援について いくらまで費用を負担するか」を判断する材料としてのみ機能しており、ひとりひとりの本質的な「支援の必要性」を、反映しているとは、いい難い状態です。


2、106項目の区分認定調査の問題点

18歳以上の人がこの法による種々の給付を受ける際は、まず、106項目からなる、障害者程度区分認定調査を受けなくてはなりません。そして調査の結果に基づき6段階の障害程度に分類されます。(区分6が一番支援の必要度が高い)

しかし、ここに自閉症を持つ人にとっての落とし穴があります。区分認定調査の106項目のうち、79項目は、介護保険での要介護認定調査項目を流用したものなのです。 そしてそこに障害者のために新たに開発された27項目を加えたものが障害者程度区分認定調査の調査項目なのです。

「加齢により、身体的機能が低下した方の要介護度」を判定するために開発された介護保険での基準を、79項目も流用しているのですから、他に27項目を加えても、障害者の支援の必要度を、正確に測るには、無理がありすぎます。
知的障害者、自閉症をはじめとする発達障害者、精神障害者の要介護度をはかる項目は介護保険にもともと含まれていないのですから、不利な判定がでやすいことが知られています。


3、施設側の大幅減収→ 常勤職員が雇えない!サービス低下の不安

今まで在籍人数に応じて支払われていた施設への報酬はこの法が施行されてから、実際に利用した実績日数分しか支払われないようになりました。利用者からの利用料も同様に日割りです。よって利用者が一日休めば、それだけ、施設側の収入は減ることになります。
多くの施設、事業所では、収入が激減し人件費が出せなくなり、職員の給与の引き下げやボーナスカットを余儀なくされています。常勤職員を解雇し、あらたに雇用できたとしても、アルバイト職員になってしまったところも多くあります。
自閉症者には、その特性をよく理解した、専門性の高い職員の関わりが必要ですが、このままでは障害者施設から、専門性を持ったプロの職員がいなくなってしまいます。
施設のサービス低下は、まぬがれないでしょう。


4、障害児の施設は、「児童福祉法」の精神にのっとり運営していくべき!


幼児期に、障害があるとわかった子供は、障害児専門の療育施設を、通園で利用することが多いのですが、この障害児通園施設の利用も、「障害者自立支援法」の範疇のサービスとなり、利用料の利用者1割負担が適用されるようになりました。
利用料の1割負担以外にも通園バスのバス代や給食費が別途かかります。
このことは、一部の所得層の親御さんにとって、これまでよりもずいぶん重い金銭的負担を強いることになり、早期療育の妨げになっています。
障害児施設での給食は、大事な療育の一環であり、摂食指導の観点から見ても、個々の摂取量には大きな違いがあるにもかかわらず、その費用を、1割負担の中に含まず、実費負担を求めているのは、おかしな話です。
保育園ならば、おかずの部分は公的費用から捻出され、障害児施設に比べれば給食費の負担はいくらか軽減されています。また、利用料の利用者負担分についても応能負担の考え方にもとづいているため、低所得世帯については利用料が低く抑えられるしくみになっています。
障害のある子供には、早期療育が大変重要ですが、障害児施設でも、上記3の項目で示したような理由から人件費の捻出が厳しくなり、力量のある職員の確保ができず、非常勤職員が非常に増えています。
これは、療育の質の低下を招くことになり、早期療育が実現できても、子どもに適切な治療教育が望める状況とはいえません。
国連総会において採択された「子どもの権利条約」の23条においても、「国は、精神的又は身体的な障害を有する児童が、その尊厳を確保し、自立を促進し及び社会への積極的な参加を容易にする条件の下で十分かつ相応な生活を享受すべきであることを認める」とあり、そのために必要な教育・医療・養育等の確保に向けて、国は努力の必要があると定めています。障害児施設の自立支援法適用による一連の流れは、この条約に沿っているといえるのでしょうか?
私たちは、障害児施設も、保育所と同じように、「児童福祉法」の理念に基づいて運営されるべきだと、考えています。




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