社団法人 日本自閉症協会東京都支部

●メディア班

メディア班とは?

・知的重度から、中軽度、あるいは遅れはないといわれるタイプまで、ひとりひとりの特徴が違っているのが「自閉症」。篤い理解と、必要な支援があれば、まったく違う人生の可能性が開ける人たちでもあります。しかし、全体像を把握するのはなかなか難しい。
しかも、自閉症に関してはさまざまな「言葉」が登場しており、混乱に拍車をかけている状況ではないかと危惧されます。いわく、高機能自閉症、アスペルガー症候群、自閉症スペクトラム、広汎性発達障害、発達障害・・・。

・いっぽうで、事件報道のありようを見ていると、2009年度の裁判員制度の実施に向けて、社会全体の自閉症理解がとても重要になっていると思われます。

◆マスコミの報道などにおいて、「自閉症」がどのように取り上げられているか。
◆またその取り上げ方に問題はないか。
◆そして、どうしたら自閉症理解を進めていけるのだろうか。

・上記のテーマで、情報交換と意見交換を行なうワーキンググループとして活動してきました。

  2009年度からはまた、新しい方針のもと、メンバー編成、内容なども変更します。

登録メンバーは?

○会員(正・賛助)であること、メディアに関係した仕事をしていることがメンバーの条件です。
○2か月に1回程度の「集い」(ミーティング。原則として夜間)を開きます。
○自由な話し合いを心がけていますが、話し合いの中での情報の取り扱いには注意を要します。守秘義務があるとお考えいただき、その原則が守れる方にご参加いただきます。

勉強会や報告書作成

○大きなテーマをまとめて、外部の方にも参加していただく「勉強会」(講演会)を企画します。
○自閉症の人の姿をできるだけ、具体的に伝えるような内容にしたいと思っています。
○その報告書を冊子として発行することも企画します。

**2008年度の活動**


*2008年度第1回メディア班の集い
6月3日(火)文京区社会福祉協議会ボランティア活動室にて、19:00~22:00
クローズドメンバーによる意見交換・情報交換の会。事件報道と障害名についての意見交換などのあと、日本テレビの情報最前線が「発達障害」を取り上げた際に取材を受けたご家族のお母さんにきていただき、取材を受けた側の思い、取材スタッフとのやりとりなどをうかがいました。
*第4回自閉症勉強会として講演会「立ち直る道を探して~更生プログラムと地域支援」を開催
○7月11日(金)大久保地域センターにて19:00~21:30 
○講師=阿部美樹雄氏(みずき福祉会町田福祉園ゼネラルマネージャー)/鈴木正子氏(通訳、翻訳者)
★ゲストコメンテーター=椎津美里氏(東京福祉専門学校、看護師)

【第1部】「知的障害のある出所受刑者の地域生活支援システムの構築」
阿部美樹雄氏講演

▽みずき福祉会の入所施設では、刑務所を出たあとの触法の知的障害者の受け入れを実践してきた。受
刑者のなかには知的障害者・自閉症者が多数含まれる実態がある。(矯正統計年報によると、知的障
害のある受刑者数は一割といわれるが、IQ70以下から見ると25%、測定不能を加えると約3割に上
ると推定される。)他の多くの福祉施設にも、支援態勢をとってほしい。その必要がある。
▽彼らが触法に至るまでを見ても、刑期を終え社会復帰を果たしてのちも、適切な支援が行われていな
いという問題がある。特に、再犯率の高さは刑務所の矯正プログラムが機能していないからではない
か。また、出所後の生活の安定・自立生活支援や累犯防止のための新たな施策が立ち遅れているので
はないか。
▽知的障害者・自閉症者は、司法(裁判)・矯正(刑務所)の場面で権利が守られているのか。倫理要
綱の作成が望まれる。
*ここで「栃木県黒羽刑務所の寮内工場レポート」(UHB「スーパーニュース」)を紹介。
▽少年院と刑務所には本質的な違いがあり、少年院は受刑者を教育し良くすることが目的だが、刑務所
は刑期を勤めればそのまま出所できてしまう。“更生”の観点は重要視されていない。

▽米国イリノイ州、オーストラリア・ビクトリア州など、海外での事例の紹介。特に、イギリス自閉症
協会が設置・運営しているヘイズ独立病院が紹介される。
*ここでヘイズを取材した貴重なフィルム(大阪毎日放送「ちちんぷいぷい」)の上映。

▽日本における再犯防止の実践と課題<阿部案>
→自立生活を目指した矯正事業のケアマネジメント体制の確立(出所後の環境整備、いわゆる福祉の網
の目にいかにかけるか)
→更正保護事業(仮釈放のための身元引受人、更正保護施設と社会福祉施設の連携)
→地域生活支援センターの充実
→措置制度(契約に馴染まないという意味で)による一定期間の自立支援の取り組み(障害程度区分の
見直し)。自立支援法の中での取り組み(触法虞犯障害者の課題を想定した支援、生活保護や年金で
出所後の最低生活水準を確保、自立支援協議会において公的な責任を明確にした仕組み作りをすすめ
る)。

【第2部】「ザ・ヘイズ~触法行為をしたアスペルガー症候群の成人を支援する施設」
鈴木正子氏講演

▽自閉症の人の療育的支援の基本姿勢で貫かれている。特徴的なところをピックアップすると、
・1995年英国自閉症協会(NAS)がモデル事業として設立。以前は精神保健法の元で拘禁されたアス
ペルガー症候群の人(18歳以上)が保安度の低い状態(閉じ込めるというのでない)で入所。
・以前は「ヘイズユニット」という名称だったが、2002年に病院として登録される。
・自分や他人に危害を与える可能性がありとされ、特別病院や医療刑務所に入所していた人たちは、
これまでに間違った診断をされていた人も多い。クスリも適切でないものが与えられ、その後遺症
に悩まされている人もいる。
・ヘイズホスピタルには、デイセンター(ブルネルセンター)と移行支援のためのサテライトハウス(パインクロフト)が併設されている。いったん出ても戻ってくることが可能(実例はない)。
・スタッフは精神科医、心理療法士、看護師その他、セラピストの多職種チーム。ケアスタッフは最
低6ヶ月の自閉症の人のケア経験者で、配置後の職務遂行能力評価制度(全国職業資格:NVQ)で高
いレベルを取得した人たち。
・スタッフトレーニングでは、SPELL、Asperger awareness、StudioⅢを全員が受講。
・SPELLはNASの考える自閉症支援の基本的考え方で、
Structure(構造)
Positive approach(肯定的アプローチ)
Empathy(共感)
Low arousal(ロウ・アロウザル、刺激の少ない安定した環境の意味)
Links(リンク)
・StudioⅢは、①問題行動をより深く理解する、②スタッフが問題行動のみにとらわれずに対応でき
るという自信を深める、③問題行動を鎮めるための言語/非言語スキル、直接的スキルを学ぶ、④最
終手段としての非暴力的な身体スキルを学ぶことである。
・入所する条件は地方自治体が費用負担(精神保健法では自立支援に関わる費用負担は地方自治体の
責任)するほか、本人が次のステップに向かいたいと強い意志を持っていること。
・入所者のケアだけではなく、スタッフのケアも十分考慮されている。

【コメンテーターの発言】
椎津美里氏は、看護師として実際にヘイズで3ヶ月の研修を受けて来られ、そのときの写真や資料を基に、さらに具体的に説明。
・ヘイズの職員全般に、「もっといいケアをするためには、もっとスタッフが必要」という意識が透徹
している。
・何を支援するのか? それは利用者が求めるものをその場で提供すること。ケアの場面は非常にの
んびりしたようなものだが、何かの問題が起きる前にその対応がすでになされているから、穏やか
な環境が保たれる。
・general nurse(一般的な看護師)と知的障害の専門ナースのスキルの違いは大きい。
*エキスパートナースの出現が望まれる。
・StudioⅢの視点を通じて、明らかな虐待でなくても、よかれと思ってやったことが結果的に虐待に
なることもあると理解できた。
・入所している人がやりたいことを選ぶことができる生活がなにより大切。そのためには、すべてを
認めることで落ち着いた生活をすることができるようになる。

 

*第2回メディア班の集い

10月2日(木)文京区市民会議室にて、19:00~22:00

ゲストスピーカー=関哉直人弁護士。自閉症の人に関係する裁判について、判決をどう読むか、などお話ししていただき、意見交換を行いました。

 

*第3回メディア班の集い

2009年2月3日(火)文京区社会福祉協議会活動室にて、19:00~22:00

ゲストスピーカー=帯金真弓・朝日新聞記者。昨秋取材を行なったイギリスの状況や、自閉症を取材するにあたってのポイントをうかがい、意見交換を行ないました。

*2007年度の第3回勉強会「二つの裁判を取材して~浅草事件と寝屋川事件」の内容*

【佐藤幹夫さんの講演・趣旨】
★佐藤さんは、養護学校教員を21年間勤めたあとフリージャーナリストに。情報を発信する側の者として、二つの事件の取材のなかで感じたこと・考えたことを、判断に迷っているということも含め、率直にお話しいただきました。
★残念ながらテープ録音に不備があり、完全な記録を起こすことはできませんでした。以下のまとめはメディア班で行っています。【文責はあくまでもメディア班にあります。】   禁・転載

内容(PDF)

★★★★

「メディア班で講演をしての感想」
これまで当事者の方の前で話したことはありましたが、親御さんを前に講演するのは初めての経験でした。事件を素材とした私の仕事に対してどんな感想を持っておられるか、親御さん方は気になる存在でした。とても複雑な思いをもっておられるはずで、普段とは異なる緊張感やプレッシャーを感じていました。
また、メディアのあり方を考えようというのが「メディア班」の主な活動だと聞いていましたので、それにふさわしい内容にしたい、とも考えていました。そこで自分用にレジュメを作りなおし、当日臨みました。事件の概要を主とするよりも、発信する側の迷いやためらいを率直に明かしたものにアレンジしたのです。このことが功を奏したのかどうかは分かりませんが、皆さんが大変熱心に聴いてくださっているのが肌で感じ取れましたし、大変よい勉強をさせていただいたと思っています。
最後に宣伝を一つ。『自閉症の子どもたちと考えてきたこと』というタイトルで、420枚ほどの原稿をまとめたところです。7月の出版となりそうです。「連続性」がキーワードで、サブタイトルとして、「喜怒哀楽を共にしてきた者の観点から」と付くかもしれません。お読みいただければ幸いです 

【佐藤幹夫 2008年4月】

☆版元は洋泉社で、定価は1800円から2000円(予定)とのことです。〔メディア班〕

*2006年度第1回勉強会の内容は冊子となっています。
「不器用な生き方の少年たち ――少年犯罪といわれるものの背景」藤川洋子講演会記録
(藤川氏は、元家庭裁判所調査官、現在京都ノートルダム女子大学心理学部教授・東京大学医学部客員研究員)
自閉症児者の犯罪は増えている、というのはほんとうだろうか――
調査官として出会った不思議な少年少女たち。
何を、どのように語りかけたら、彼らの心に伝えることができるのか、
罪を犯さないよう、踏みとどまらせるためには何が必要だったのか、
彼らが、社会の中で生きる時の課題とはどのようなものか、
家庭調査官としての33年の経験の中で出会ったふしぎな少年たち。 彼らとの対話の中から、早期からの的確、かつ継続的な支援の必要性を提言しています。
定価500円 ⇒刊行物からお申込みください。

■問題のある報道内容をお知らせをいただいた場合に、メディア班がそれに直接対応することは控えます。問題報道に関しては、問題を感じた個々の方々が対応されるのがまず一番と考えます。伝え聞いた、いわば間接的な情報で動くことは、解決にならない場合が多いのです。

■しかし、お寄せいただいた情報については、問題を集約して、勉強会などの企画で対応していきたいと思います。また、東京都自閉症協会や日本自閉症協会に具体的な活動を提案をしていく場合もあるでしょう。

■問題と思われることに抗議したり、問合せをするなどのアクションを起こすことは大事なことです。しかし、その行動によって報道機関が自閉症問題をとりあげることに拒否反応を起こすような結果は避けなければなりません。

■具体的な自閉症の人の姿や暮らしを伝えながら、理解者を増やしていくような活動を心がけたいと思います。

*メディア班の記録*

○2006年度の活動
◆2006年7月、東京都自閉症協会/NPO法人東京自閉症センターの会員の中で、出版・報道に関わる仕事をしている方々のグループ「メディア班」を立ち上げました。
◆班メンバーの「集い」を5回、講演会形式の「勉強会」を2回、開催しました。
◇第1回「自閉症勉強会」・・・2006年9月29日(金)18:45~21:10 中野ゼロホール西館学習室4
  「不器用な生き方の少年たち―少年犯罪といわれるものの背景」
講師=藤川洋子、コメンテーター=市川宏伸(都立梅ヶ丘病院院長)

◇第2回「自閉症勉強会」・・・2007年1月31日(水)19:00~21:15 文京シビックセンター
「長崎事件・検証――メディアは何を伝えたか」  講師=堀江まゆみ (白梅学園短期大学教授) 
    with 関哉直人(五百蔵洋一法律事務所弁護士)、コメンテーター=市川宏伸
○堀江先生は、
・障害者が地域社会で安全に暮らしていけるために、というテーマで始めたKプロ(警察プロジェクト=本HP「自閉症支援」参照)の活動状況を説明。
・事件報道の仕組みといったことから、報道と世論形成のメカニズムを解説、そして障害者の側に立つ者としては、逆に自分たちからどういう情報をメディアを含む社会へあげていくかを考えていかなければならないのではないか、と提案されました。
・たとえば、


【新聞記事の見出しを並べて検証】
報道の仕方で事件の印象は変わる。動機が一見不明な事件がおきたとき、まずその事件の異常性がとりあげられ、そのあとに、障害名が発表されるという流れが多く、そこで障害への印象ができてしまう。
しかも、報道は短期間で終息してしまい、いったんできあがった印象を変えていくようなフォローが行われない。
その点、長崎事件については、長崎新聞が長期にわたる報道を行っていることに注目。


【実験的に新聞の紙面づくりを行い、一般の人がそれにどう反応するかを見た】
障害について前向きな記事を読んだ前と後では、障害への理解が変わる結果が見られた、メディアの方々には、報道の内容・方法による影響の大きさを意識してもらいたい、と提案。

 

○関哉弁護士は弁護士として、2006年、耳目を集めた八尾事件(幼児投げ落とし事件)をとりあげ――
・(知的)障害者とか、作業所に通っているとか、また前科があるなどが断片的に報道されたが、詳細に踏み込んだものではなかった。知りたいことが伝えられていないと思う。たとえば、「前科」の内容もきちんと報道されず、まるで「社会から隔離すべき存在」という印象を強く与える結果になっている。
――などのお話が出ました。
○また、勉強会のあとから、2通のメールをいただきました。
・八尾事件が福祉施設の現場に投げかけた影響について。
・事件と障害名がつなげられて報道され、世論が形成されていく過程を危惧する、裁判員制度のこともある。
――といった内容でした。

その他




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