最近、世間の注目を集めるような少年事件で、加害者に自閉症やアスペルガー症候群などの障害が認められるケースがあります。家庭裁判所の処 分決定の理由をよく読むと、これらの障害そのものが事件を起こしているのではないことがわかりますが、中には障害名をことさら強調したような 報道もありました。精神鑑定でどのような障害名がつけられるのかが取材の焦点となり、障害名を早く突き止める競争が過熱したように思えるケースもありました。その結果、事件の猟奇性や不可解さと、「自閉症」「アスペルカー症候群」などの障害名が結びついた形で、世間にインパクトを与え、人々の記憶に焼きついてしまう事態をもたらしています。
こうした報道の影響で、多くの自閉症やアスペルガー症候群の人々や家族が偏見や誤解にさらされています。過度に危険視され、地域での日常生活に支障が出ている人もいます。
しかし、自閉症やアスペルガー症候群の人たちが犯罪(非行)の加害者になるケースは極めて少なく、むしろ、いじめ、差別、犯罪の被害者になっているケースが圧倒的に多いのが現実です。なぜ、加害者になった時だけ障害名を強調されなければならないのでしょう。障害が直接事件を引き起こしているのではないにもかかわらず、<自閉症・アスペルガー症候群=危険>との印象が世間に植えつけられるのでしょうか。
私たちは「報道するな」と主張しているのではありません。自閉症やアスペルカー症候群の人たちのことを、世間に正確に伝えてほしいのです。 誤解や無知ゆえに、障害をもつ人や家族がどんなに苦しんでいるのかを世間に知ってほしいのです。
個々の事件の深層には、障害をとりまく社会的要因がさまざまな形で<原因>に影響を与えているはずです。単に障害名を突き止めることに取材の目的を置かす、その背景に広がる社会的要因に目を凝らしてほしいのです。
自閉症やアスペルガー症候群は社会に認知されているとはいえません。誤解が横行しているような現状で、不可解な猟奇的事件と結びつけられては、深刻な悪影響を後々まで残す恐れがあります。そうした特段の事情を考慮し、私たちは次のことを提案します。
事件と障害の因果関係が詳しくわからない段階では障害名はできるだけ報道しないでください。特に、初報では原則として障害名には触れないなどの配慮をしてください。
障害名を報道する場合には、見出しには取らないなど読者に強い印象を残さないよう配慮してください。
自閉症・アスペルガー症候群に関する報道で迷うことがあれば、日本自閉症協会か同協会の推薦する専門家に見解を求めてください。
世間の「ゆがんだ自閉症観」が拡大再生産されないよう、報道機関で働くみなさんと確認しながら、障害のある人もない人も互いに理解を深め、安心して暮らせる社会にしていきたいと思っています。